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リトアニア・レポート 7

ファイナルの日、8名の歌を聴く。
欧米のコンペティションは本選の前に必ず1日リハーサル日も設けてあったりと長期戦。
みんな、緊張をキープさせるのに本当に大変だった様子で、歌い終えてほっとしていた。
審査員も言っていたが、誰もがファイナルで1位になり得る位のレベルと個性だ、と。
ファイナルだけ見ていても本当にそう思った。
グランプリはポーランドの彼・ヴォイテック。
今年、リトアニア首都で行われるジャズフェスティバルと来年の国際コンペのゲスト出演が決定。
大きな舞台で経験を積んでもっと大きくなっていくんだろうな、と思うと私も楽しみでならない。

コンペ期間中の毎晩、街のジャズクラブやコンペ会場であったコンサートホールでゲスト演奏があった。ポーランド、ドイツやトルコ、また他国からのバンドと去年から今年にかけてリトアニア周辺国でのコンペの受賞者であるリトアニア出身シンガー達や、去年のこのコンテストクランプリ演奏も。
本当に全てが素晴らしくて、しっかりステージとしての構成もなされていて非常に楽しめたし勉強になった。
一体、この小さな国々で何が起こっているんだろう?と本当に不思議と驚きの気持ちでいっぱいだった。

段々最後の晩に近づいてきた。
クライペダ市にある有名なクラブで毎晩繰り広げられているセッションに顔を出す。
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シンガー達が「ビール飲むぞ!」と飲みまくり(グラスのでかい事!)その中の1人から癖のある黒麦ビールを勧められて飲む事に。私の横で気分良くなった勢いか名残惜しいのか、アメリカのシンガーがいきなりセッションでMiles Davis の曲をかっこいいスキャットで歌いまくっていた。
批評でシャイだなんて言われていたのが嘘の様。
それを聴いていた私にリトアニアのコンペ関係者達が「カオルも次行け!」とばかりに言われ、ブルースが始まったとばかりに勝手にその日のバンドの中に入ってスキャットで参加。
何コーラス歌うねん!と突込みが入りそうな位ガンガン歌っていたら、2階からシンガー達がステージのある1階へ降りてきて口を開けて聴いている(笑)。
何か良く分からないけど、気分良く終わった(爆)。

最後の晩、ここで受賞者のライブがあり、関係者や出場者や観客で店は埋め尽くされた。
一人一人、緊張感から解放されたのびのびとした歌を聴く。本当に皆素晴らしい。
それを横で鼻歌交じりでボランティアで働いてくれていた人達も歌っているのが聴こえてきた。
何?みんな歌詞を覚えていて、しかもスキャット普通にかっこいいし!
聞けば、現在クライペダ大学でジャズを勉強中の子達や(見た目が超セクシーな大人なので全く学生とは分からず)、関係者でもジャズ好きな人達ばかり。ポテンシャルの高さに驚く。
こんな人達からサポートしてもらっているんだと感じただけで身の引き締まる思いがした。

次の朝、私以外の全員が一斉にそれぞれの住む国へ発つ。
実は私だけが乗り継ぎの便でよいフライトが見つからず、1日ずらせて出発することに。
この短い滞在ながら、地球の裏側で若い世代のジャズシンガー達が何を感じ悩み想い勉強を活動を続けているか、それを知れただけで本当に実りのある旅だった。

国が違っても皆同じ事を考えて日々音楽生活を送っている。
簡単に上手くいく事など、ミラクルなど何も無い。日々の積み重ね、結局それがあって今がある。
私を含め、みんなそれぞれの課題を持ち帰り、また何かしらの再出発を送る事だろう。

大分酔っ払っていたのがあったのか、私も初めて一人で行った国もあり、張り詰めた緊張という名の糸が切れ、気持ちのコントロールが出来なくなり、音楽が導いてくれたこの国での出会いの喜びのあまり、人前で号泣してしまった。
それには、勿論、東北大震災のあった日本から来ていたことで、本当に沢山の人達から声を掛けられ、この気持ちを日本へ持って帰って欲しい、と幾度も言われたこともある。
津波の動画を観て、地球の裏側ではあるけれど、あまりの残酷さに声を失い、しばらく現実に戻れなかったというリトアニアのシンガー。
ジャズクラブでドリンクを注文しようとバーカウンターの前で立っている私に話し掛けて来た現地のおじさん。相当酔っているようだし、リトアニア語でしか話しかけてこないし、ここはスルッと退散しようと思った矢先「Where are you from? Why are you here?」と訛りのある英語で話し出す。
「日本から1人でコンペの為に来ている。」
と伝えるといきなり体勢を整えたと思ったら、身体の前で両手を合掌し、
「そうか。良く来てくれた。僕は毎日、日本に祈りを捧げているよ。是非この祈りを日本の人達に届けて欲しい。」とお辞儀まで。
「しっかりとその気持ち、受け取って持って帰ります。」と伝える。
リトアニアには親日家も多いと聞いた。こんなカジュアルな席でカジュアルな会話。その一つ一つが私の心に刻まれていった瞬間だった。
有難う。

私が号泣しているとボランティアスタッフをしてくれていた現地の女の子にハグしてもらい
「いいのよ。心が落ち着くまで私の胸で泣けばいいのよ。 We love you.また是非私達の国へ歌いに来てね。待っているから。」と。
自分より10歳位も下の子が私を癒してくれたり。何て心が成熟しているんだろう。あの身体の温もりは一生忘れないだろう。

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リトアニアのシンガーの1人。ファイナルで素晴らしい歌を披露したエディータ。彼女も美しい心が歌に表れていた1人。今後、この地域のジャズヴォーカルシーンを担って行くだろう存在であるのは確かだった。

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仲良くなったシンガー達。左からドイツのジェニファー。ベルギーのガブリエル。ノルウェーのイングリット。私。
レストランへ行くと、彼女達も同じようにBGMがうるさくない場所の席を確保。それでもうるさければボリュームダウンしてもらうよう頼む!理由は、負けじと大声で話をして喉を必要以上に痛めない為。話が早い(笑)。

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★東かおるライブスケジュール
by kaorumusic | 2011-05-06 04:15 | リトアニア・レポート

【ジャズヴォーカリスト・ヴォーカルコーチ・プロデューサー】東かおるの日々を気軽に綴るブログです


by kaoruazuma
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