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リトアニア・レポート 6

セミファイナルの結果は、イギリス、ロシア、クロアチア、ポーランド、フィンランド、ラトビア、リトアニアからのシンガー達がファイナルへ。私は残念ながらセミファイナル止まりでした。
発表があった時、セミ or ファイナリスト関係なく何人かがすごく暗くて
「どうしたの?」「おめでとう!」って私が声を掛けていたら
「なぜ貴方が選ばれなかったのかおかしい。」とか「キミが選ばれるのは当然だと思ったのに。」と私如き=他人如きで落ち込んでいるだなんて!
なんてみんな心の優しい人達なんだろう、と驚き感動した。
私もその晩は相当悲しくって、というのも、用意していた日本の国旗カラー・ワンピを着て、規定曲を含めた準備していたあと3曲も歌いたかった、というのが理由で。

結果報告と審査員からの批評を全員で聞く(全員の前で批評を言われる事については文句も出ていましたが、私は一人一人の批評が聞けて非常に為になりました)。

まず、国際ジャズヴォーカルコンペティションというくらいだから、各国から来ているということで、どこに基準を設けるか、ということが非常に難しいという事。
例えば、トルコには12音階以上にさらに細かい音程があり、アレンジの1つとしてイントロに付けて歌った国のトラディショナルソングの歌唱時、その独特の音程で歌っていた。
それが、「音程が間違っている、ピッチが悪い。」とトルコのシンガーは言われていた。
また、ノルウェーのシンガーは、「ステージ上でシャイ過ぎる。」と言われていたが、それはノルウェー独特の内に秘めた表現なだけでその一言はどうかな?と感じたり。
同じくアメリカからのシンガーにも「規定曲の君が付けたコードアレンジはモダンで独特で素晴らしかったけど、コンペティションとしてはシャイ過ぎた。」と言われていて、後で彼女は「そういうコードアレンジで敢えてそう歌ったんだけど・・・。」と納得がいかずショックを隠しきれていなかった様子で。
またドイツのシンガーは、「サックスとヴォーカルのハーモニーを付けたライン。最後の1音同士がクラッシュしていた。あの1音と、少しアグレッシブな部分が無ければね。」と言われ、少しご立腹。
というのも彼女はクラシックピアニストとして別のピアニストとツインピアノとしてヨーロッパをツアーしている方が多いらしく、ハーモニーやアレンジはお手の物。
なので、敢えて面白い2音を置いたアレンジだったけど、そこを言われたもんだから・・・。

あとは、どこかの国のシンガーの批評時、審査員が英語詞の発音についてコメントを。
アクセントかキツイとか話していたような(うろ覚え)。
だけどその時、
「日本のカオルは、日本語から来ているのか何となく僕達にない英語のアクセントがあってユニークで新鮮だった。」
と審査員が今は違うシンガーのコメント中に“日本から来ている”私の話を持ち出した。(一体、どれだけ日本のジャズシンガーの英語能力が低いと思っているのだろう、と考えさせられた)
その時、他の国のシンガー達が
「カオルの発音は全てハッキリと聞き取れる位クリアーだったわ!」
と何だか“また日本人だからと思って話し振られてるし・・・”と少し不愉快になっている私を見兼ねて話を割って入ってきてくれた。それで私は
「そう言って貰えて嬉しいけど、私はアメリカに留学して、発音はしっかり先生について学びました。」と一言だけ言って話しにピリオド。
私の批評時でないけれど、これは国際コンペならではで嵐を呼んだトピックだった。

さて、私の批評。
他のシンガーに比べて何故か酷評がなく逆に褒められるだけで、一体このコンペで何が良くなかったのか知る由もないまま時間が過ぎ去る。
とにかく、心に響いた、とはその場に居た全審査員に言われた。
またステージに立つ事に慣れている事、またステージを通して曲の持つ意味を引き出すスキル、またフレージングのスキルが高い事を褒めてもらった。
だけれども、まずはステージがあまりにも気持ちよかったので、規定の時間を結構オーバーしていたようだった。その辺も含めた曲のアレンジの再見直しを言われた。

あと、ビブラート。これも嵐を呼んだな(笑)。
ドイツのビバップを得意とするシンガーが1人審査員にいたのだけれど、彼女から私のビブラートを指摘された。「ジャズではあまり振り幅の広いビブラートは要らない、と。」
隣にいた別の国の審査員が「僕は君のそのコントロールしたビブラート使いに関心したよ。」
また隣の審査員人は「僕も同感。」と。
私「・・・(じゃ一体何なの!?この意見の違いは!)。」
そしたら、主催者&審査員であるリトアニアの彼が
「僕の中でデータは少ないけれども知っている日本のシンガーはビブラートの振り幅というより、喉でそれを作る、または僕達西洋の言語と少し違って喉から発声をすることが多いように思う。きっとそれでビブラートの種類が違うんじゃないかな?」と。
その後、すかさずノルウェーのシンガーが耳元で
「私の大学の先生でありKarin Krogと貴方がたまに使う振り幅のあるビブラートが似ているのよ。気にしないで。」と。

何だかこれに関して訳が分からず帰国してきた感あり。
だけど、よく日本のジャズシンガーを聴いてみると、実際によくビブラートをかけている(かけ過ぎも一理あり)のに気付く。
ジャズに限らず、演歌や民謡、如いてはお経においてもビブラートや『こぶし』で感情を出す、行間を埋めるような独特な効果をもたらしている事に気付いた。これには今後、リサーチしていきたいと思う。

話は反れたが、国際ヴォーカルコンペの批評は非常に興味深く、また審査員の基準もまちまちなので相当上位を決めるのは難しかったんだろうと誰もがそう思った。

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★東かおるライブスケジュール
by kaorumusic | 2011-05-06 04:02 | リトアニア・レポート

【ジャズヴォーカリスト・ヴォーカルコーチ・プロデューサー】東かおるの日々を気軽に綴るブログです


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